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【原子力基本法】「安全保障」の削除求める |
2012年06月24日07時57分 |
国会で原子力規制委員会設置法が成立したが、同法には看過できない問題点が含まれている。 同法の付則の中で、原子力基本法の一部改正と称して原子力の利用目的に「わが国の安全保障に資する」との文言を書き加えたことだ。安全保障という言葉は、将来の核武装に道を開くかのような拡大解釈を招きかねない。 規制委設置法の上位法であり「原子力の憲法」と言える基本法を、このような姑息(こそく)なやり方で改悪することは認められない。 1955年公布の原子力基本法は、原子力の研究、開発、利用は平和目的に限り行うと規定している。それには唯一の被爆国として、核兵器開発には手を染めないとの決意が込められていたはずだ。 今回、基本法に加えた安全保障について、政府は核物質の軍事転用や核テロを防ぐ「保障措置(査察)」「核セキュリティー」を指すとしている。それならきちんとそう書いて、「核武装への布石」といった誤解を与えないようにするべきだ。 原子力規制委員会設置法案の審議は短期間であり、とりわけ安全保障の議論は尽くされていない。これでは原子力政策の大原則である徹底した情報公開を満たしているとは言えない。 そもそも、原子力の平和利用限定は基本法の根幹に関わる大きなテーマである。その変質につながりかねない重要な書き換えを、別の法律の付則で行うなどあってはならない。 原子力基本法とともに平和利用を担保しているのが国是の非核三原則だ。ただ、核兵器を「つくらず」「持たず」「持ち込ませず」のうち、「持ち込ませず」は日米密約で形骸化していたことが明らかになっている。 民主党政権下では武器輸出三原則の「骨抜き」も進んだ。原子力規制委設置法と同じ日に成立した改正宇宙航空研究開発機構法も、平和目的の既定を外し人工衛星の防衛利用などを可能にする内容だ。 戦後、非軍事や平和を原則に築き上げてきた「国のかたち」が、なし崩し的に変わってきている。 原子力基本法改正について、藤村官房長官らは軍事転用にはつながらないと主張する。そうであるならなおさら、安全保障目的を削除し平和原則を再度誓うなどして、国民の懸念を払拭(ふっしょく)するよう求める。 |